腸内フローラ.com|腸内細菌叢の乱れで、体内時計が狂う!?

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ヒトに限らず、地球上の生物は自転とほぼ同じ1日(24時間)周期で体内環境を変化させており、これを概日リズムと言います。もともとは昼夜の変化に適応したものですが、実は、光や温度変化のないところで安静を保っていても概日リズムは維持されています。体内時計があるからです。体内時計は、体温、血圧やホルモンなどのリズムを整えていて、その体内時計が乱れてくると、肥満、糖尿病、心血管疾患やがんなどのリスクが高まることが報告されています。
脳にある「主時計」と、全身の細胞にある「末梢時計」

ところで、私たちの体内のどこに時計があるのでしょうか? 1972年、脳の視床下部の視交叉上核(しこうさじょうかく)という部分に、哺乳類の体内時計(主時計)があることが見つかりました。視交叉上核にある神経細胞は、目から入った光の情報を受け取り、松果体という所へ信号を送ります。松果体からは、「メラトニン」という睡眠を促すホルモンが、朝日を浴びてから約14〜16時間後に分泌されます。メラトニンは脈拍や体温、血圧などを低下させ、体に睡眠の準備ができたことを認識させて自然な眠りに導きます。ですので、朝7時に起きると夜の9〜11時ごろに眠くなってくるのです。視交叉上核が破壊されると、規則正しい睡眠リズムが完全になくなります。 その25年後の1997年に、体内時計をコントロールしている「時計遺伝子」が発見されました。代表的な時計遺伝子は、体内時計の刻みを促進するCLOCKとARNTL(BMAL1)、また抑制するPERIOD(PER)とCRYPTOCHROME(CRY)などが知られています。驚いたことは、時計遺伝子は、視床下部の視交叉上核だけではなく、心臓、肝臓、肺、筋肉、肺、粘膜や皮膚など、あらゆる全身の末梢(まっしょう)組織にも存在することがわかりました。これらは脳にある「主時計」に対して「末梢時計」と呼ばれています。 脳の「主時計」は、全身の細胞にある「末梢時計」がバラバラに働かないように指揮をしています。まるで、「主時計」と「末梢時計」は、オーケストラの指揮者と奏者の関係みたいですね。 ところが、「末梢時計」の狂いが、「主時計」に影響を及ぼすことも報告されています。2012年、ペンシルベニア大学の研究者らの科学誌「Nature Medicine」の報告によると、脂肪細胞にあるARNTLという時計遺伝子を欠損させたマウスは、寝る時間帯に食事の摂取量が増え、同じカロリー摂取でも、規則正しい生活のマウスより体重が増加しました。 著者のひとりであるフィッツジェラルド博士は、「打楽器演奏者が、指揮者なしでドラムをたたき、その作用が指揮者に影響したようなもの」と説明しています。研究者たちは、脂肪細胞の末梢時計が視床下部と、双方向性に情報をやりとりすることが、食事のタイミングにおいて重要な役割を果たすことを示しました。
参考URL:http://www.nature.com/nm/journal/v18/n12/full/nm.2979.html

でも、なぜ体内時計が狂うと、肥満、糖尿病、心血管疾患やがんなどのリスクが高まるのでしょうか?
理由はいろいろ考えられていますが、前回のこの連載でご紹介した「腸内細菌叢(そう)」が、その候補のひとつになっています。体内の数十兆の細胞に「末梢時計」が存在する、というだけでも驚きですが、もし、私たちの腸にすんでいる、およそ100兆個という数の腸内細菌まで体内時計に関与しているとなると驚嘆ですよね。
ところで腸内細菌叢の乱れのために生じる疾患は、体内時計の狂いで生じる疾患に類似していると思いませんか?
この謎解きに挑戦したのが、イスラエルのワイツマン科学研究所の研究者らです。その結果は、昨年の科学誌「Cell」に報告されました。
腸内細菌叢も時差ぼけになる!?

研究者らは、一日のさまざまな時刻において、マウスの糞便(ふんべん)を集めて、腸内細菌叢を解析しました。すると、サンプルの採取時刻で、異なった腸内細菌叢の種類や活動が認められました。マウスは夜行性動物ですが、夜間に細菌たちは、エネルギー代謝、DNAの修復や細胞の増殖のために忙しく働いていました。一方日中は、体内の有害物質を水に溶けやすく体外に排出しやすい状態に変える解毒作用などの機能を維持するための基本的な作業に努めていました。 次に研究者らは、時差ぼけのマウスとヒトにおいて、腸内細菌叢を解析しました。マウスは、旅行はしなくとも、部屋の明かりや食事のタイミングを操作して、時差ぼけの状態にしました。時差ぼけマウスと正常なマウスの大きな違いは、食事の時間帯でした。正常なマウスは、活動的な夜が食事の時間帯でしたが、時差ぼけマウスは、つねに食べ続けていました。そして時差ぼけマウスは、正常のマウスと同じ食事の摂取量にもかかわらず、体重が増えて、糖尿病となりました。 ヒトにおいての被験者は、2人の米国からイスラエルへの旅行者です。研究者らが、時差ぼけ前、中、後における糞便サンプルの解析をすると、マウスと類似の細菌の変動を認めました。時差ぼけの被験者のサンプルは、肥満や糖尿病の人でより一般的に見られる腸内細菌叢が増加していました。また、時差ぼけが改善した後は、これらの腸内細菌叢が正常に戻り落ち着きました。つまり時差ぼけになると、腸内細菌叢が一時的に「肥満・糖尿病タイプ」に変化してしまうわけです。さらに、時差ぼけの被験者の腸内細菌叢を、健康なマウスに移植すると、時差ぼけ前の被験者の腸内細菌叢を移植したマウスに比べて、体重が増加し、血糖値の増加、体脂肪もより高くなりました。 この報告で、昼夜が逆転した職場で働く人や睡眠障害の患者さんがなぜ肥満になりやすいか、という疑問に対する一つの答えが導き出されました。昼夜が逆転し、体内時計が乱れている人は腸内細菌叢が、いわば「肥満型」に移行してしまうわけです。この点についてさらに、今年5月、シカゴ大学のユージン•チャン教授らのチームにより、腸内細菌叢も体内時計のリズムの調整に関与していることが、科学雑誌「Cell Host & Microbe」上で報告されました。
時計遺伝子が、腸内細菌叢と相互作用を起こす!

食事の質や内容は、私たちの腸内細菌叢に影響を与えます。チャン教授らは、時計遺伝子が、腸内細菌叢と相互作用をもつのかどうかを検討しました。 研究者らは、2種類のマウスを準備しました。1)無菌マウス:腸内細菌叢をもちません。2)従来のマウス:無菌マウスとの比較のためのマウスです。研究者らは、食事が、腸内細菌叢と体内時計に与える影響を調査するために、マウスに低脂肪食または高脂肪食のいずれかを与えました。 その結果、腸内細菌叢をもたない無菌マウスは、高脂肪食を与えても太りませんでした。また無菌マウスは、低脂肪食と高脂肪食のいずれの食事を摂取しても、肝臓の時計遺伝子の発現が変化し、24時間のリズムが狂っていました。つまり、食べる物の種類とは無関係に、腸内細菌叢がないと正しい概日リズムの調節ができないことが示されました。 一般的に、腸内細菌叢を作る細菌の種類は一日を通じて変動し、一日の中でも特定の種類の細菌が増えたり、減ったりします。次に研究者が従来のマウスに低脂肪食を与えたところ、この腸内細菌の日内変動も、時計遺伝子の発現も通常通り、乱れなく起きてマウスは肥満にはなりませんでした。一方、同じく従来のマウスに高脂肪食を与えると、時計遺伝子の発現の規則が変化し、概日リズムの乱れを生じたのです。結果、このマウス本来の性質とは異なる異常な時間にえさを食べるようになり、肥満になりました。さらにこの高脂肪食を与えた従来マウスは、腸内細菌の種類の変動も、低脂肪食のマウスと大幅に異なったパターンになっていました。 食事の質は、マウスの腸内細菌叢の種類を左右するのですが、それだけではなく、腸内細菌の一日の変動パターンをも変え、時計遺伝子が制御する概日リズムにまでも影響するのです。細菌のパターンと時計遺伝子発現のリズムがどのような仕組みで連動しているのかは、これからの研究テーマです。また今後、ヒトでの検証も期待されますね。私たちが注意することは、不規則な夜更かしはやめて、十分な睡眠をとること、そしてバランスの良い食事を摂取することですね。
引用元:LIVEDOORニュース

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