腸内フローラ.com|腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)は帝王切開でも母乳でも大きく変化

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腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)が自己の一部であると分かってくると、赤ちゃんから成人するまで菌叢の形成過程、およびそこに影響を及ぼす要因について当然知りたくなる。 実際、先進国から未開のアマゾンで暮らす現地人に至るまで、さまざまな年齢の腸内細菌叢が比べられているし、最近紹介したように、腸内細菌叢の多様性が早く成立すると食物アレルギー発症に重大な影響を及ぼすと示す論文も発表されている(食物アレルギーが出る子と出ない子、その裏には腸内細菌を参照)。
腸内細菌と遺伝子の解析

こうした論文は通常膨大になる腸内細菌叢のデータを、一般にも分かりやすく詳しく解説しているとは到底言えない。 その点で今回紹介するスウェーデン・ヨーテボリ大学と北京ゲノム研究所からの論文は素人にもわかりやすくデータが解説されている。タイトルは「生後1年間の腸管細菌叢の動態と安定化(Dynamics and Stabilization of the Human Gut Microbiome during the First Year of Life.)」だ。 オーサーの貢献度に関する記述から見るとヨーテボリ大学が集団を追跡調査する研究を企画して、遺伝子の解読と解析は北京ゲノム研究所が行ったのだろう。 腸内細菌叢のプロジェクトにいち早く取り組んで解析技術を磨いてきた北京ゲノム研究所の躍進が感じられる。

1年間の腸内細菌を調べる

研究では98人の新生児について生後1週間まで、4カ月、12カ月の便の細菌叢の遺伝情報を読み取ってどんな種類がいるのか調べている。同じ検査を母親にも行う。 さらに、母乳だけで育てた場合、人工栄養だけで育てた場合、両者の混合で育てた場合の違い、抗菌薬の投与があったのかを記録している。 データ自体は膨大で、解説がないと理解できない。逆に言うと理解していくには、生データより、おのずと解説に誘導されていく形になる。 次のようにまとめることができる。

帝王切開や母乳などで変化

まず生まれてすぐ形成される腸内細菌叢は正常分娩と帝王切開による分娩で大きく異なる。 最初の腸内細菌叢が母親の皮膚や口内細菌に由来するが、帝王切開の場合周りの環境に存在する細菌を取り込みやすいと示している。 さらに、抗菌薬に耐性の腸内細菌もこの時期から検出される。ただ、幼児期に抗菌薬投与を行ったから、耐性菌が増大するというわけではない。あまり神経質になることはない。
次に、こうして生まれた最初の腸内細菌叢は母親の腸内細菌叢と大きく異なっているが、4カ月、12カ月と徐々に母親に近づく。 すなわち、腸内細菌叢の多様性が増大し、スウェーデン人が一般的に持つ型の腸内細菌叢へと収束していく。 ただ、12カ月ではまだはっきりと母親とは違っている。母乳栄養に対応してビフィズス菌や乳酸菌が多い。さらに、アミノ酸やビタミンを作り出す腸内細菌叢がまだ多くないためと研究グループは推察している。
腸内細菌叢の成長に母乳による栄養か、人工栄養かは大きな影響を持っている。母乳で育てる方が腸内細菌叢の多様性が大きい。 最後に、離乳を果たし固形物を食べるようになって初めて、セルロースなどを分解する腸内細菌叢が成長することなどが示されている。
より良い赤ちゃんの栄養へ

このようなデータは、今後、腸内細菌叢に対して人間の手で変化を起こすような研究を行うための重要な基礎になる。 その上で、理想の離乳食や、人工栄養を目指した科学的研究が進むのだろう。 まだまだ我が国の取り組みは遅いが、人種や生活環境の影響が大きいと考えると、重点項目として独自に推進する必要があるだろう。
文献情報

Bäckhed F et al. Dynamics and Stabilization of the Human Gut Microbiome during the First Year of Life.Cell Host Microbe. 2015;17:690-703.
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25974306

引用元:Medエッジ

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